「グランドオーストリアホテル」の感想

 「グランドオーストリアホテル」というボードゲームをプレイしたのだが、2人で2時間級のゲームとしては、ほぼベストと言っていい出来と感じた。その感想を簡単にまとめたい。

 

 まず、ランダム性を許容できるようにするデザインが見事だ。あらゆるアクションがダイス目で決まるという不確定性の高いデザインになっているが、ワイルドの目を用意したり、ダイス目をプレイヤー間で共有したり、スネークドラフトでアクションを選んだり、パスをすることによってマリガンができたり、と補助のメカニクスが大量に使われている。しかし、それらはあまり煩雑ではなく、プレイしてみるとわかりやすいものだ。こういったシステムのおかげで、気持ちよく運に振り回される感じが味わえる。

 客を客室に入れて、得点化するというのが、このゲームのコアシステムとなるのだが、そのシステムが全体的に優秀だ。まず、部屋や食事を用意するのは、アクションとなるが、客が部屋に入ったり、食事を提供したり、というのはアクションとせず、ダイス目に左右されなくしたのが良い。また、部屋は3種類あり、基本的には対応する客しか入れることができないのだが、客はワイルドがかなりの割合で入っている。つまり、ある色の部屋に入れることができる客が出てくる確率は、1/3ではなく、2/4となっており、許容できる範囲になっている。また、ある区画の部屋が埋まった場合にもらえる区画ボーナスと、客自体が持っているボーナスがあり、前者は根幹的なボーナスがもらえ半固定、後者は様々なボーナスがもらえランダムという振り分けが見事だ。片方に偏ってしまう場合には、リプレイ性が損なわれたり、ランダム性が高すぎたりしただろう。

 皇帝トラックというサブメカニクスも良い。実質的には、他のゲームで良くある宗教トラックに近いものなのだが、ペナルティが付いており、それが重いために、実質的な食料支払いにも似たプレッシャーになっている。また、ペナルティが付く領域、損得がない領域、ボーナスがもらえる領域という3つの区画を作ることで、2つの閾値を作ることに成功しており、それを超えるか否かという駆け引きがうまれる。

 早取りのマイルストーンや皇帝トラックのペナルティ/ボーナスは、3種類に分けられており、それぞれからランダムで1種が選ばれるようになっているため、条件の偏りが発生せず、適切なタイミングで適切な条件が来るようになっている。

 

 このように、基本的にはランダムに彩られ、それを楽しむゲームでありながらも、ランダムによって台無しにされる感じがなく、それを上手く使いこなせるかを楽しめるゲームになっている。出来が良すぎて、他のゲームでもこれを見習えばいいじゃんと思う箇所が山のようにあった。