「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」の問題点

 この間、「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」を観てきた。ようやく、頭の中で整理が終わったので、その感想について書きたい。しかし、そのためには、まず、最大の問題作であるEP8について振り返る必要がある。EP8のどこが悪かったのか、EP9のどこが良いのか、EP8と9の違いと言った順に考えていきたいと思っている。

 

 まず、EP8にはテーマの主張がない。ゆえにまとまりがない。色々とテーマらしきものは提示されるのだけれど……

 ・誰かを犠牲にして勝利を得るべきなのか(ローズの姉、ホルド提督、フィンの特攻作戦)

 ・少数人の作戦では物事を変えることはできないのではないか(ルークの台詞、カント・バイトの作戦、上記の特攻)

 ・ポリティカル・コレクトネス(動物愛護、人種、美醜)

 どれも、中途半端でサイコロ振って結果決めてるんじゃないかというレベル。特攻については、成否がバラバラで、成功したからと言って、何か特別なことがあったわけでもなく、逆もしかり。ゆえに主張が存在しないのと一緒だ。君、フィンの特攻止めてたけど、ホルド提督の特攻がなければ、レジスタンス崩壊してたからね。めちゃくちゃだ。少数の作戦も同じ。必要な現象が起きることもあれば、ただの無駄足ってこともある。けれど、それらに論理的な差違がない。そこから見いだせるものがないのだ。最後のも同じで、例えば、カイト・バイトとクレイトでは、両方とも動物の力を借りるのだが、最終的には、別の人の力で危機を乗り越え、動物はそのきっかけにしかなっていない。そもそも、帝国側も極端に動物を虐待しているとか、侮っているとか、そういう描写もないので、対比がない。人種もしかり。ただ、考慮しましたっていう映像ばかりが悪目立ちしてしまっている。

 

 次に、論理的な繋がりがない。レイとレンの感情的な動き、ルークとレン、ルークとレイの師匠弟子の関係、レジスタンスの作戦、スノークの意図……どれも脈絡がなさすぎる。前述の事項とも関連があるのだが、つまりは連なりがないように見えるのだ。ルークとレンは失敗し、ルークとレイは成功した。しかし、その差は? レジスタンスの作戦は成功したり、失敗したりだけれど、何が問題となっている? スノークはレンの心を読むことに失敗した。それはなぜ? どれも理由が提示されていない。ただ、そうなったというだけのことだ。だから、観客は、お、おう……というリアクションしか取れない。現実ではそんなもんだろうが、これは物語であるどころか、英雄譚を超え、現代の神話と言われているスター・ウォーズだ。

 

 最後に、越権行為が目立ちすぎる。続編という形を取っている。ゆえに、世界観は統一され、その法則は同じであるはずだ。しかし、それを覆してしまっている。フォースは魔法でないはずなのに、魔法のようになってしまっている。もし、これだけのことができるのが、フォースなのだとしたら、今までのエピソードの人物はそれに思い至らなかった痴れ者なのか? フォースだけでは飽きたらず、SFギミックまでも壊れてしまった。ハイパードライブ特攻が出来るなら、それは兵器になっているのでは? 今までのレジスタンスがそれをやってこなかった理由は? 彼らは臆病者で、死を覚悟していなかったからか? おかげで、続編のEP9まで強力なフォースが飛び交い、ホルド提督のあれはできないの? できない(理由は明言されない)というやり取りまで必要になってしまった。最終作ならまだしも、途中の作品でそれをやってしまうのは、本当に最悪で、過去作を否定して、次作に枷をかける最低な手段だ。

 

 これだけでも、端的に言った方で、問題ばかり。そもそも、映画として面白くないという決定的な欠点もある。確かに、ファンの期待に応えるばかりでは意味がない。そんなの、存在しないのと同じだ。しかし、その期待は上回るべきものであって、裏切るものではない。「スパイダーマン:スパイダーバース」は今までのスパイダーマンから大きく変化し、期待を上回ったが、裏切りはしなかった。四次元殺法コンビのAAを送ってやりたいよ。壊すだけなら、サルでも出来る。サルが脚本を書くためにキーボードをランダムに打てばいいだけなんだから。いろいろな制約やレガシーがある中、それをクリアした上で、変化を付けるべきだろう。それがわからないなら、他シリーズのメガホンを預かるのはやめるべきだ。