貯めている人

 未来のために貯金している人を見ると、少し軽蔑した気持ちになってしまう。ああ、保険をかけて生きているんだ。ずっと生きるつもりなんだね、君は。そんな態度になってしまうのだ。

 結果として貯金をしてしまうのならわかる。収入と支出があって、基本的には支出の方を多くは出来ないのだから、結果として貯金が増えていくのは自然なことだ。買いたいものがないとかもあるし、むしろ、高額な買い物のために貯金していることもあるだろう。けれど、例えば、天引きとかで毎月数万円とか財形していたり、別口座とかに入れていると、あ、なるほど、もういいですって気持ちになる。そういう人にどうしてやっているのかと聞くと、何となく、未来が不安だからとか、老後のためとか、親に言われてとか、なんかもうそういう、はいはい、そうやって生きていってくださいねって理由ばかりなんだよね。

 クレジットとか電子マネーを使いすぎるって使わないようにしている人も意味がわからないと思ってしまう。現金なら使わないって、それは小学生みたいな金銭感覚で、数字というよりは実物としての札を認識しているってことだし、そうでなくても、本当は現金がなくて買えなかったものが、欲望のままに買えたんだからいいことじゃんって思ってしまう。

 いや、駄目だろう。お前はそうやって、まともな人に対して、なんの意味もない、批判にもならない愚痴ばかりをこぼしているように思える。こんな精神のあり方は間違っている。こんなのは、真面目に生きて、誠心誠意未来に向き合って、次世代のために生きている高潔な人々を、盲目的だと斜に構えた批判をしたつもりで、実は自分の足下すら覚束ない愚昧な人間のあり方でしかない。なのに、そうとしかなり得ないのは何故だ。どうして、こうなってしまったのか。皆が頽廃的で悲観的で衰退していけばいいとでも思っているのか、お前は。ああ、その通りだ。もし、そんな世界になったら、世界の人間が世界に対して冷笑的に構えたまま消えていくのなら、僕は唯一、そういう人たちを愛せたかも知れないな。