金銭に関して

 僕が妙に金銭を嫌っていて、また、世間的にも悪徳とされたりする理由を考えて見た。そこで思ったのは、金というのは、量だけが問題とされる珍しいものなのかなと思った。

 厳密に言えば、紙幣にはナンバリングがされていて、その番号から犯罪に使われていた場合は~とかってこともあるのだけれど、そのごく一部の例外を除いて、金銭には質がない。どんな方法で得てもいいし、どんなものと引き替えても良い。よく考えて見ると、世の中には量だけが問われるというものは滅多にない。近いのは時間ぐらいだけれど、実際には老人の一時間と若人の一時間は異なる。金は同じだ。誰が使っても、一万円は一万円なのだ。

 その特殊性から、金銭は無限の欲に結び就く。1円よりは2円の方がいいし、一万円よりは一兆円の方がいい。適量というものが、論理的には存在しないのだ。少しより多くのものを、少しより多くの金を、と欲望は無限に肥大化していく。けれど、現実には無限は存在しない。宇宙ですら、無限の前には文字通り凍り付く。ましてや、人類や人間なぞ。その現実を反映せずに、欲望だけが膨らみ、自身を破滅へと導いていくのだ。

 だから、僕は金銭への欲望を抱えている人を見ると、思わず死を想起してしまう。その無限性から、虚無を感じてしまう。だから、嫌いなのだろう。