結局のところ……

 ここ最近、どうにも鬱々としていて、気持ちが晴れなかった。どういう時にそういう気持ちになるのか、人によって異なるものがあると思うけれど、僕の場合には生活が安定してきた時にそうなるのだよね。仕事が落ち着いてきたり、新居に慣れてきたり、そういう、未来が見渡せる状態になった時に、ふと思ってしまうのだ。僕は、こんな楽しいとも思っていない生活をあと何年も続けるのか? と。

 学生時代は良かった。五年もしないうちに環境が強制的に切り替わるからだ。そこには、自分の力だけでどうしようもない要素もあって。そんな不透明感が、逆に生きる気力に繋がっていた。どんなに今が楽しくなかろうと、どうせ崩壊する。それが希望だった。

 社会人になると、それはなくなった。自分で変えなければ環境は変わらないし、この現代日本では、環境をコロコロ変える人は好まれない。そんな封鎖的な未来が常に横たわっているように思えてきた。

 でも、それは違うんだよね。あくまで、僕が安定を望んでいるから、環境が変わらないのであって。何をするにも自由であるはずなんだ。狂、痴、愚をもっとちゃんと胸に刻んで生きていけば、もう少しはマシな人生になるはずなのだから。

 この世界は全て無意味、無価値、苦痛でしかない。けれど、それはもう与えられてしまったもので、変えることができないならば、その監視を縫うようにして、僅かでも面白いことに触れて、楽しいことをやって生きていくしかないのだ。結局のところ、君は正しいよ。幸福に生きるしかない。