躓く場所

 仕事中暇だったから、色々と調べていたら、ある言説を見た。

 そこで言われていたのは、哲学者と芸術家の違いだった。

 曰く、何のために生きているのか、みたいな根源的だけれど答えが出ない問題を考えてしまう人が哲学者になってしまうらしい。そして、それを無視すること出来て、美とは何か、最も素晴らしいものとは、みたいなことが気になってしまうと芸術家になってしまうのだという。そして、そういった実用性のないものを全部無視できる人間が、社会で仕事ができる人だと。一理あるな、と思った。

 僕にとっては、根幹的な問題が解決していないのに、枝葉にこだわるのはおかしいという感覚が物心ついた頃からあって、どうしてもそれを気にしてしまう。日々の一瞬で過ぎてしまう出来事に関しては、その本質を無視することは出来ても、僕の人生のような一生付き合わなくちゃいけない事に関しては、絶対に無視が出来ない。今は考えないようにしようと思っていても、どうしても思考がそっちに行ってしまう。つまり、僕は最初から躓いている。その一歩が踏み出せないままに、実際には意味のない小石のようなものにばかり、意識を傾けている。僕にとって、その小石こそが、人生という大きな建造物を崩してしまうだけの力がある、要のような気がしてならないから。

 思えば、僕が疑問に思ったことを口にすると、そんなことを考えてどうするのってよく言われたなぁ。僕としては、これも答えられないのに、何かが出来るとは思えなかったんだけれど。僕がまるで成長していないのを見ると、彼らの方が正解だったようだ。