飲み会に関して

 急に思い出したことがある。

 僕がもうこの生活は限界で、絶対にこの会社を辞めてやると決心した時は、ある日の飲み会の帰りだったということだ。

 送迎会だったか、歓迎会だったか忘れてしまったが、それは三月か四月にあったと思う。その時、もう間に合わないだろう新人賞に応募する予定の小説を書いていて。でも、それに集中出来ていて、日十数ページ書き進めていくことが出来ていた。そんな中で職場の飲み会が入ってしまった。まあ、それでも何とかつじつまが合わせられると自信を持てるペースだった。僕は何かと理由を付けて断れば良かったのだけれど、歓送迎会とかで断りにくくて、行ってしまったわけだ。

 飲み会中は、外交モードと自分で呼んでいる状態に切り替えて、何とか乗り越えていって、そして、帰路についた。

 その時に気付いた。今まであったはずの小説への集中力が、僕の中から消えてしまっていることに。

 気力がなくなってしまったことから来たのか、飲み会で気にくわないことがあって、そこに集中してしまったのか、それとも、何もしゃべらないということが書くという行為への集中に繋がっていたのか、理由はついぞわからなかった。でも、僕はその日から明確に書けなくなった。復活するのに、数週間はかかった。

 この会社に勤められるような人と話すと害が生じると明確にわかった瞬間だった。退職を実行するきっかけはまた別にあったのだが、決意が生まれたのはこの時なのだ。

 僕は、本当にこの職場の飲み会という行事が全く理解出来ない。交流を深めるという人もいるけれど、正直、より嫌いになった試ししかないし、別に彼らの話すことに興味はない。仕事が終わっているのに、仕事とか家族とか昇進とかの話をしていると思ったら、パチンコ風俗の話になっているの、本当に狂気じみていると思う。最近見た映画の話とか、発売間近のゲームの話とか、死生観について変わったこととか、そういう話をするならいいと思うし、僕も行きたかったさ。でも、天気の話に始まって、昔はどうだったみたいな話をされても、何も反応できない。適当に返すしかなくなってしまう。

 どうして、彼らは平気でいられるのか、全然わからない。