「SSSS.DYNAZENON」の感想

 正直に言うと、マインドセットを間違えたかな、という感じだった。なんというか、「ワンダヴィジョン」と似たような感じだ。この作品においての偽トロは、前作である「SSSS.GRIDMAN」である。これは、作品にギミックがあって、それを主軸とした物語が展開するタイプだった。だから、観ていて、ギミックを期待してしまった。どのような設定で前作と繋がっているのだろうか、と。実際には独立性が高かった。

 でも、これは脚本的に失敗していると思う。大した意味もないのに、偽トロを出してしまって、X-MENとの融合というところに目が行ってしまって、ワンダの、大事な人を失った後の精神の復活という主軸が失われてしまったように、変にガウマさんの過去を引き延ばしたせいで、怪物という感情や自由性の発露と戦う社会不適合者の社会性というテーマが薄れてしまった。

 大した秘密でもないのだから、中盤辺りにあっさりと解決してしまえば良かったのに。そして、この世界が前作のような設定でないことを明確化する。他にも、主人公や怪物の立場、テーマ性を1話で明示するとか、そういうことが必要だったように思う。マインドセットというのは、かなり重要だな、と感じさせられた。「劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト」が優れているのはこの点が大きい。しょっぱなから、直接的にテーマを明示してしまう。だから、読み取りが薄くなってしまったとしても、物語の目的を失わずに済むのだ。ゆえに、あれだけの情報量があっても、観客は迷子にならずに済む。これがちゃんと出来ていない作品は多く、今作もこれに含まれると感じられた。

 最終回まで観て、薄々わかってはいたが、やはり、ギミックはないのか、と安心すると同時に、じわじわと良さが湧いてきた。新しいことに挑戦していたと思うし、それは一部成功していると思う。しかし、やはり、マインドセットが上手くいっていない。群集劇として、敵味方が複数人主軸になっているのも、悪い方向に働いている。単純に、コストがかかるので。時間が間に合っていない。しかし、描写を上手くすれば、間に合わないことはなかった。序盤のセッティングが失敗しているのに、中盤以降、無駄が多かった。それが敗因だろう。

 作画は言うまでもなく良かった。アクションも。

 最近、序盤のマインドセットの重要性をしみじみと感じる作品が多い。これによって、観客はこの物語をどう観るかの視点を決めるのだから、かなり重要だ。素晴らしい監督は皆、ここが上手いと常々感じているのだが、それは正しいようだ。