「不朽のフェーネチカ」に関して

 死に関する作品(以下略)

 この作品の著者は、「地の底の天上」の人で、出来れば同じ著者の作品は入れたくないと思ったのだけれど、素晴らしい漫画が案外思い付かなかったので。振り返ってみて気付いたのだけれど、僕ってどうやら漫画という媒体に対してあまり高い評価を付けないようだ。映画とかならベストがいくらでも思い付くのだけれど、漫画でそのレベルって思い付かない。きっと、漫画という媒体が多岐にわたる表現力を備えているのに対し、基本的に日本では一人で書いているためだろう。映画やアニメ、ゲームは、多くの人が携わり、プロフェッショナルたちが力を合わせているのに対し、漫画は基本的に(最近は異なる傾向があるが)絵が得意な人の目的であることが多く、話がそれほどでもないことが多い。また、日本では連載を経て、単行本になるものが多く、無駄なものを嫌う人間にとって、連載ほど憎いものはない。人気があり、素晴らしい作品ほど、長引かされて、襤褸になったら捨てられるのだから。アメリカの連続ドラマに傑作が少なく、つまらなくなった時に打ち切られると言われているのと同じだ。

 この作品はシンプルながらに、いろいろなものが面白く繋がっており、それがまとまりを持っているのだけれど、コアとなる部分は感情であるという非常に良い構成になっている。読者が人間である以上、どんなに凝った構成にしても、大元に感情の流れがなくてはならないと僕は思っているので。流石、短編を書かせたら随一の著者である。短いけれど、内容が細かく物語に繋がっているため、あまり言及するとネタバレになるんだよなぁ。まあ、でも、物語が上手い作者さんは、時間の扱いが上手いという共通点があると常々思います。