持たざる者

 「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」で、指パッチンからの復帰組に対する憎悪を燃やす指パッチン回避組、という描写が出てきて、めちゃくちゃありそーと思ってしまった。というか、現実でもこういうことは起こるからね。

 基本的に社会的な弱者(この場合では指パッチンからの復帰組)に対して、何かしらの支援が行わることは行政の常なのだけれど、そのターゲットから漏れた人々(指パッチン回避組かつ家計とかが厳しい人)は、その弱者を騙し屋だとして、そこに憎悪をたぎらせる、という構造が良くある。人類は、利益を得ることを阻止されるのが一番イラつくので、そこからの心理なのだろう。本来ならば、自分たちにも支援を、と行政を責めるべきだと思うのだが、支援があった人の方を攻撃してしまう。

 こういう心理は、最終的に、自身が何もしていないのに、何かを持っているという思想にたどり着く。レイシスト愛国者というのは、基本的にここに基づいていて、つまり、その環境で生まれた時点で、何かしらの資源を得ている、と考える。そして、その特権が脅かされたり、他の派閥に特権があることが許せない、というわけだ。本来、自分たちが無償で得られたはずの利益を取られているという妄想にとらわれてしまう。

 本当に哀れなことだ。相手が自分とほとんど同じ存在であり、偶然、今回は立場が違うだけだということがわからないのだから。そういう哀れな人には、本来ならば支援の手が差し伸べられるべきなのだが、過激な言動のせいで、余計に皆から遠ざけられ、彼らのターゲットとされた集団は逆に同情される。そして、分断はどんどんと強まり、小さくて過激なコミュニティが出来上がりというわけだ。カルトと同じ感じだね。