あまり金は欲しくない

 どうして僕が金銭をあまり欲しいと思わないのかということを考えていたのだけれど、これ、チートっぽくて嫌いなのだとわかった。つまり、金とは万物におけるほとんど万能な解決器であって、これを使っても達成感というより、無気力感が勝ってしまうのだ。

 僕はRPGなんかを昔は好きでやっていたのだが、プロアクションリプレイが全盛期を迎えた時代であっても、ほとんどチートは使わなかった。ストーリーが読みたいのに、戦闘がかったるいとか、金稼ぎがかったるいとか、そういう部分で行ったことはあるのだけれど、完全無敵みたいなことはしなかったのだ。どうしてかというと、僕はチートデータでゲームをやるとあまりにも虚無感が増して、何も出来なくなってしまったからだ。

 ゲームというのは、ある意味で課題を楽しむものだ。もちろん、ストーリーを読むためにやったり、開放感を味わったり、腕前を向上するためにやったり、ということはある。けれども、僕はある種の縛りの中で、ボスを倒すといった、課題を楽しむやり方をしていた。特にRPGなんかは。これでチートを使ったどうだろう。課題が消失してしまう。僕がゲームをやる理由がなくなってしまう。

 金銭も同じで、それが無限のようにあれば、あらゆる問題が解決してしまうことだろう。それでは、あまりにも虚無が過ぎるように思える。もちろん、赤貧になりたいと言っているわけではない。けれども、金銭がない中で、どうすれば希望の状態に近づけるのかという考えを巡らせている時間が、それにどうにか近づけようとしている状態が楽しいのではないかと思うのだ。僕が常々、目が覚めたらこの世界に一人だけになりたいと思うのも、理由は同じで。皆がいるのに、その人たちを頼らないのはあまりにも馬鹿らしいのでやらないが、独りしかいなくて、全てを自分で考えて、手を動かさなければいけないという状況が絶対に楽しいと確信しているが故なのだ。