作品の面白さに関して

 僕は、作品の面白さというのは、大きく分けて二つのものがあると思っている。一つが物語で、一つが表現である。前者は技術で、後者はセンスだ。前者は理性で、後者は感情だ。僕がある作品を好んでいる時、その理由は大抵前者によるものだ。

 これは、ある意味で、大衆向け、エンターテイメント作品とするか、批評家向け、アート作品とするか、の違いであるとも言える。

 僕は前者が好きなので、宮崎駿作品で一番好きなのは「天空の城ラピュタ」だし、黒澤監督作品で好きなのは「七人の侍」だ。創作者が表現の領域に行ってしまうのを悲しげに見ている人間の一人であると言える。

 たまに、そうでない作品もある。

 たとえば、僕が盲信に近いほど好んでいる唐辺葉介、あるいは瀬戸口廉也作品。これは、もう完全に表現の作品だと思っているが、ことごとく嵌っていて、最上級に好きだと言える。物語がなくとも全然構わない。ただ、彼の文章を読んでいられればいいと思っている。僕が彼の作品を文学だと感じているのは、ここによるものが大きい。文学作品というのは、物語などあってないようなもので、その表現が全てなのだから。

 逆に、理性的には面白いと思っていても、全く心が反応しない人の作品もある。水上悟志作品がそれで、良く出来ていて、評価がいいのもわかるんだが、どうしても面白いと感じられたことがない。全くない。するするしていて、引っかかるところがない感じ。対岸の火事を見ているような。どうにも感心が持てない。

 あれ、そうすると、僕が重視しているのは、まるで表現かのようになってしまうな。違うと思っていたのだけれど、そうなのかもしれない。うーん、作品の面白さって本当に多面的だから理屈にするのが難しいな。個人差もあるし。

 

 これを習得できる技術だと考えているのが、アメリカの特に映画脚本の分野で、二年ではアニメ、小説、漫画、映画ともに才能だと思われているように思えるけれど。だから、アメリカの脚本術の本は割と参考になるものが多いのだよね。日本ので今のところ感心した本は見つけられていない。

 

 多分、これも考えが足りないのだと思う。もうちょっと色々考えて結論を出したい……